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≪ビジネス/ものづくりお役立ち市場 マガジン  vol. 009 ≫


8 先行リサーチシナリオ目的律と因果律 イノベーションの中心課題

      8.1.イノベーションの中心課題(1)(第36回) 2017年号

キャリア・コンサルタント協同組合 風 巻  融

私は、環境問題こそ第4文明パラダイムにおけるイノベーションの中心課題だと思っている。しかし、テクノロジーはCO2を排出しないエネルギー供給システムへの移行に成功しいていないし、移行のロードマップすら定かではない

ビジネスは、ビジネスこそがCO2を排出しないエネルギー供給システムへの移行の旗手であり、移行シナリオを描く責任があることの自覚を欠いている。 法律は、社会のコンプライアンスが、CO2を排出しないエネルギー供給システムへの移行こそを、コンプライアンスの指導理念にするべきであるのに、そのことに躊躇している。

政治においては、たとえば、COP21(第21回 気候変動枠組条約締約国会議)において、パリ協定(Paris Agreement 2015年12月12日)を合意・採択したにも関わらず、翌2016年9月3日に温室効果ガスの二大排出国である米国、中国が同時批准し、10月3日EUが批准して、11月4日に発効したにも拘らず、トランプ米大統領は、2017年6月1日パリ協定からの離脱を宣言した。G20において、米国を抜きに19カ国はパリ協定を履行することで合意した。脱退の手続きに3年から4年を要するため、米国の正式なパリ協定離脱は、つぎのアメリカ合衆国大統領選挙が行われる2020年11月3日以降となる。パリ協定の、できるだけ早く平均気温上昇のピークアウトを迎え、気温上昇を抑えたいという願いをよそに、政治は何がどうなるかという、一端書き始めた目的律によるロードマップは、黒ペンキの落書きで汚された有様だ。しかし、気候変動枠組条約締約国(COP)には留まっている。

  

「産業革命以前に較べて、世界の平均気温上昇を『2℃未満』に抑える。加えて、平均気温上昇『1.5℃未満』を目指す。」という画期的なトップダウン目的を掲げている(第2条)。『2℃未満』という表現が、世界的な共通認識になったのは、2009年のCOP15からで、2007年5月- IPCC第26回総会で承認された第4次評価報告書を踏まえてのことであった。COP21におけるパリ協定合意は、2020年以降(京都議定書以後)の地球温暖化等の気候変動への対処は、『2℃未満』という目的律の指導理念に切り替えることを意味する。

  

パリ協定では、地球温暖化等の気候変動への対処は、温室効果ガスの排出削減と吸収を行う「緩和」対策(省エネの取組みや、再生可能エネルギー、低炭素エネルギー、カーボンニュートラルエネルギー、CCSの普及、植物によるCO2の吸収源対策等)と、既に起こっている温室効果ガスによる影響への「適応」対策(気候変動影響の軽減・防止のための備えと、熱帯雨林の保全、新しい気候条件の利用、リスクの回避・分散・需要と、機会の利用をふまえた対策、渇水対策や農作物の新種の開発や、早期警告インフラ整備など)によって行われる。

パリ協定では、各国が独自に決めた削減目標NDC(Nationally Determined Contribution)を作成・提出・維持する義務と、当該削減目標の目的を達成するための国内対策をとる義務を負っていることを協定したのである。この(2917年)11月6日から11月17日まで、ドイツのボンでCOP23が開かれている。

国際エネルギー機関(IEA)によると、2016年の世界のエネルギー起源CO2排出量は321億トンCO2で、2016年5月の気候変動枠組条約事務局の報告書によれば、2030年の温室効果ガス(GHG)の排出量は各国のNDCを総計した効果を踏まえても、2℃目標を最小のコストで達成するシナリオの経路には乗っていない。各国のNDCを総計した効果を踏まえた2030年の排出量は、同シナリオの排出量から152億トンCO2 超過しており、同報告書では更なる追加削減が必要と指摘しているという。

  

かつて、先進国の筆頭で最大のCO2排出国でありながら、京都議定書に後ろ向きであった米国と、目覚ましい経済発展をしながら「われわれは発展する必要がある」として自らを途上国と規定していた中国とインドも「有志途上国」としてパリ協定に署名して、発効したと思ったら、米国はたちまち離脱を宣言した。中国は先の20回共産党大会で「聳え立つ中国」を高らかに謳い上げた。これは、直接無制限にCO2を排出する権利があるといってはいないが、かつて「われわれは発展する必要がある」といっていたのと全く同じではないか。「ケ小平の白い猫と黒い猫」「改革開放路線(経済)」「先富論」(1985年) 中国のWTO加盟(2001年12月)に騙された経験がある。ケ小平理論により中国には「白い猫」が増えるものという幻想を抱いた。事実は「黒い猫」の大量繁殖と汚職・腐敗の蔓延であった。さすがに内部崩壊の危機を察知して「トラも、キツネも、ネズミも容赦しない」としている。同様に、温暖化ガスや微粒子物質(PM2.5)の排出による自国の環境破壊と気候変動にも危機を認め、パリ協定にも署名し、党大会でも積極的な姿勢を打ち出している。しかし「聳え立つ中国」の旗印がある限り、米国が離脱するなら中国も離脱するというような策謀や、中国に特別NDC(削減目標)を認めるようなことがあってはならない。

  

COP21パリ協定が、その実をあげるにはどうしたらよいか。 私見であるが、OECDとCOPとの連携を強力に進め、両事務局を統合・強化して、全世界に単一基準の「環境課徴金」制度を創設するとともに、気候変動・環境保全ODAを大幅に強化するようなことを実施する必要があるということである。

  

OECD(経済開発協力機構)は、もともとは1948年OEEC(欧州経済協力機構)として、16ヶ国の加盟で発足したものが、1961年OECDとして改組されたものである。OEECは、

本稿の第34回で述べたごとく、アメリカによるヨーロッパ復興支援計画を目的としているマーシャル・プランの受け入れを調整する機関としてパリに設立された。ヨーロッパ復興支援を受ける国は、米国の援助額(US$)と同額の自国通貨を積み立て、これをもって自国企業ならびに市民への復興資金援助を行う。披援助国は、米国からのみ復興に必要な物資、技術供与ならびにサービスを受けることができる。いわゆる紐付き援助(tied assistance)の始まりであった。しかし、東西冷戦下において、西側諸国(16ヶ国)は復興を果たし、米国経済は終戦によって失った戦時需要に相当する需要と雇用の確保でき、経済的混乱を避けたうえ、戦時経済から平時経済への転換を果たしたとされている。

  

1961年、ヨーロッパ経済の復興に伴い、欧州と北米が自由主義経済や貿易で対等な関係として発展・協力を行う目的として、発展的に改組され、現在の経済協力開発機構(OECD)が創立された。その内部機構として開発援助委員会(DAC)が設けられ、政府開発援助(ODA)が始まった。さらに1964年以降、従来の枠である欧州(非共産圏)と北米という地理的制限を取り払い、アジア等にも加盟国を拡大した。

  

ソ連邦の崩壊と東西冷戦構造の消滅した1990年代、 OECDは、開発援助委員会のトピックとして、環境、持続的成長可能な発展をはじめ、環境や地球温暖化等の気候変動への対処に関わるトピックに常に関心を持ち、先進国と開発途上国の経済成長と開発と自由貿易の発展への貢献を目的として来た。このOECDの目的の中に『2℃未満、できる限り1.5℃未満』を中心的理念に据えて貰うわけにはいかない物だろうか。

先進国であっても、カーボンニュートラル化が遅れていれば、カーボンニュートラル化後進国である。「カーボンニュートラル化ODA」を先進国、開発途上国いずれでも受けられるようにする。そのための資金として「カーボンニュートラル課徴金」を活用するのはどうであろうか。

                                            つづく

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             8.2.イノベーションの中心課題(2) (2017年第37回)   

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私は、前号で、環境問題こそ第4 文明パラダイムにおけるイノベーションの 中心課題であることを指摘した。しかし、テクノロジーはCO2 を排出しないエネ ルギー供給システムへの移行に成功しいていないし、移行のロードマップすら 定かではない。

  

COP21 以降の戦略は、「緩和」対策と「適応」対策とをベースとしている。 「緩和」対策とは、地球温暖化等の気候変動への対処は、温室効果ガスの排出削 減と吸収による「緩和」対策を行うことである。具体的には、省エネの取組みや、 再生可能エネルギー、低炭素エネルギー、カーボンニュートラルエネルギー、CCS (Carbon-dioxide Cap-ture and Storage :二酸化炭素回収貯留)の普及、植物 によるCO2 の吸収源対策等を行うことになる。これは、なりゆきまかせにして置 けば必然的に増大一方になる世界の累積CO2 排出量よりも各国の累積CO2 削減量 を多くして、全体としてCO2 の排出量を減らして行こうする戦略である。カーボ ンポジティブの状態から、カーボンニュートラルの状態へ、さらにはカーボンネ ガティブエネルギー時代へ移行しようという構想なのである。

「適応」対策とは、既に起こっている温室効果ガスによる影響への「適応」対 策のことである。気候変動影響の軽減・防止のための備えと、熱帯雨林の保全、 新しい気候条件の利用、リスクの回避・分散・需要と機会の利用をふまえた対策、 渇水対策や農作物の新種の開発や、早期警告インフラ整備などによって行われ る。「適応」対策によってCO2 の排出削減にはならないが、既に起こっている温 室効果ガスによる悪影響・気候変動に起因する損害をなんとか軽減しようとす る対策である。

  

カーボンネガティブエネルギー時代への移行という戦略は、一義的に、移行コ ストが高額であることが障害となっている。さらに、枯渇性エネルギー(石油、 天然ガス、石炭、ウラン等)からの代替えがほぼ不可能な重要産業セクター(防 衛、航空、鉄鋼など)があることも障害になる。

地球温暖化等の気候変動への対処は、電気エネルギーの発生を完璧にカーボ ンフリーにしてしまうことによって突破口を開くべきである。再生可能エネル ギーによる発電は、テクノロジーとしては十分に利用可能であるが、ビジネスと しては火力発電よりもコスト高なのが現状である。

  

再生可能エネルギー(Renewable Energy)というと、再生可能はともするとリ サイクルと混同しがちであるが、リサイクルとは全く関係ない。英語の Renewable Energy は、IPCC 第4 次評価報告書によって「太陽・地球物理学的・ 生物学的な源に由来し、自然界によって利用する以上の速度で補充されるエネ ルギー全般」と定義されて以来、この定義が用いられている。Renewable を「再 生可能」と訳すには多少の違和感があるが、この訳がもちられている。具体的に は、太陽光、太陽熱、水力、風力、地熱、波力、潮汐、温度差、バイオマス等々 である。再生可能エネルギーとして半永久的に利用可能で、かつ膨大な資源量が 存在する。技術的に利用可能な量は少なくとも現在の世界のエネルギー需要の 約20 倍で、2100 年時点で予測されるエネルギー需要と比べてもなお数倍以上大 きいと見積もられている(IEA)。

  

具体的な、利用可能資源量の見積は国によって大きく異なる。また、どの資源 の普及率が高いか、どの資源による発電量が多いかも、それぞれの国状に応じて 異なる。日本は再生可能エネルギー(Renewable Energy)への移行に遅れている 先進国である。これは、地球温暖化等の気候変動への対処に遅れをとっていると いうことである。電気エネルギーを発電し、送電し、販売するビジネスセクター は、唯一、枯渇性エネルギー(石油、天然ガス、石炭、ウラン等)への依存から 脱却し、再生可能エネルギー利用のコスト高を克服するために挑戦するべきな のであろう。

  

2011 年末における世界の風力発電量のビッグ5 は、1 位中国(62,733MW)、2 位アメリカ(46,919MW)、3 位ドイツ(29,060MW)、4 位スペイン(21,674MW)、 5 位インド(16,084MW)となり、以下フランス、イタリア、イギリスとなり、日 本は13 位(2,501MW)である。風況によって発電の採算性に大きな影響があり、 風速の変動が出力電圧や力率に影響を与えるなどの短所を持ちながら、比較的 発電コストが低く、運転時に温暖化ガス排出が無い長所を生かして普及にドラ イブがかかっている。

一方、太陽光発電は、1970 年代の石油危機に触発されて各国とも力が入った。 当時日本の導入量は、一国で欧州全体を上回っていたが、一般消費者による個人 導入が主流で、さらにスマートグリッド普及とのミスマッチもあって、発電量の 統計が世界的に不備になっている。そのため発電量はソーラーパネルの生産量 から計算されていて、国別発電量を集計したものは民間に依存したものしかな い。それでも2010 年における世界の生産量は29GW にも昇り、地域別年間導入 量は欧州(13.2GWp)、日本(0.99GWp)、北米(0.98GWp)、中国(0.52GWp)、 APEC(0.47GWp)、他(0.42GWp)であるという。そのため温暖化ガス排出削減に どの位寄与しているかの推計が非常に難しい。一方、大型ソーラーパネル発電プ ラントのようなものも現れている。

  

再生可能エネルギーとして半永久的に利用可能な資源量は膨大にある。地球 上に最も豊富にある資源は地熱で、その理論的資源量は約140,000,000EJ(エク サジュール)といわれ、太陽光の約3,900,000EJ、風力の6,000EJ に較べて、そ の大きさが解る。地球上の大概の場所で、10km も掘れば200℃くらいの地熱で ある。温泉の湧出、噴出しているところの近傍なら、もっと浅いところで200℃ 程度の地熱は得られる。深さ10km の掘削は、石油探査の試掘ではごく普通に行 われている。直径20cm 位のパイプを打ち込み、その中に熱交換器と注水管と出 力管を接続して下ろしてやれば、蒸気タービンを駆動する程度の水蒸気をつく れる。この程度の秘伝の技術を持っている企業はいる筈だ。

  

再生可能エネルギーを上手に活かすには、風力発電なら風況や風速に左右さ れないこと、太陽光なら日照時間、天候に左右されないことを基本機能として具 備したインターコネクションノードをもつ新世代のスマートグリッドと集積化 されたシステムコンセプとがあって然るべきだと思う。秘伝の技術を新しいコ ンセプトで体系化することがテクノロジー開発である。テクノロジーとビジネ スが同じ目的律で連携し、テクノロジーモデルとビジネスモデルを同時に革新 しなければならない。次号では、年も変わるので、そのモデルを示してみたい。

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             8.3.イノベーションの中心課題(3) (2018年第38回)   

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 Renewable Energyは、再生可能エネルギーではなく、せめて「再補充可能エネルギー源」と呼ぶべきである。伝統的な、漢語由来の日本語の感覚としては、「再生」は一度死んだ物を生き返らせるという意味が濃厚で、Renewableとは異質である。英語のRenewable Energyは、IPCC第4次評価報告書によって「自然界によって利用する以上の速度で補充されるエネルギー全般」と定義されて以来、この定義が用いられている。Renewableはもっぱらカーボンフリーの状態で自然現象によって「補充される」エネルギー源であることを意味している。したがって、無尽蔵に無料で使えるエネルギー源である。対極にあるのは、「枯渇性エネルギー源」である。

 再補充可能エネルギーを上手に活かすには、風力発電なら風況や風速に左右されないこと、太陽光なら昼夜、日照時間、天候に左右されないようにして活用する必要がある。これらのエネルギー源は、波動的、間歇的に変化するのが特徴なので、エネルギーを何らかの形で貯留しないと有効に利用できない。また、現在の利用形態は、直接利用が多く、課題を残している。とくに、現在のスマートグリッドでは機能的にも性能的にも十分ではない。しかし課題があるところにこそ将来性があると言える。COP23以降、風力発電や太陽光発電への投資がにわかに活発化しており、投資セクターからの日本批判も強力になっている。

 わが国では、「エネルギー供給構造高度化法」等複数の法律、政令で定められているが、Renewable Energyの統一定義は無い。重要なことは、枯渇性エネルギー源でないことに発し、100%カーボンフリーであることである。中には「新エネルギー」のように、ウランや天然ガスまでを、再補充可能エネルギー源と一緒にして延命を謀る、悪質とも呼ぶべき類義語まである(新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法)。学術的にまったく体をなさないもので、先進諸国の批判を浴びている。

 もっと酷いことに、日本はCO2排出量を16%削減できるという石炭火力発電プラントを6基、ODA援助付きで、発展途上国向けに受注した。16%削減できることが、日本のテクノロジーの手柄話のように報じられていることが異様である。中国は、削減型でない石炭火力発電プラントを10基も受注している。どちらの例も、途上国のもつ排出権の枠内に収まっているとしているが、それならば、日本も中国も相手国の排出権を買い取ってからでなければ、COP締約国として筋の通った行動にはならない。批判があって当然なのだが、これらの批判を含めCOP23については、どのメディアも殆どまともな報道をしなかった。丁度、国会が解散になり、暇がなかったというのがいいわけである。  COP21以降の「緩和」対策の戦略は、カーボンフリーなエネルギー源への切換えにあるにも拘わらず、カーボンリッチな石炭火力への投資をするのは何事か。日本が、COP21で強調して、決議の中に明記することになったテクノロジー開発の重要性とは、たった16%の在来比削減というこんなごまかしのことだったのか。という批判である。

  

   中国では第19回党大会で、習近平が環境問題、気候変動について随分と立派な構想を述べている。本当にやる気はあるのか、実現できるのか、世界はまだ半信半疑である。しかし、その一方で、カーボンリッチな石炭火力発電所を途上国に安く売りつける。これが中国式である。なぜなら、彼等はカーボン排出権をもっているからだというであろう。

しかし、その一方で、風力発電やメガソーラーの建設にも非常に熱心で、いつの間にか、いずれも世界トップの発電量を誇るに至っているだけでなく、発電プラントのベンダーとしてもトップ企業は中国企業で、世界中に輸出をしており、さらに世界の投資マネーを引き付けている。習近平構想を強引に実現して行くだろう。

  

 日本にも、世界の投資マネーを引き付ける優れた商品・テクノロジーがいくつもある。残念ながら、投資マネーを魅了する宣伝が下手である。カーボンフリー・再補充可能エネルギー産業(商品)の世界のドミナントデザインを造り上げる事業意欲が低調である。大体、カーボンフリー・再補充可能エネルギー産業(商品)が、これからの、唯一の成長産業であるというニーズ認識・市場認識を欠いているところに原因がある。世界のドミナントデザインを造り上げる事業意欲という点で、日本のビジネスはいつも臆病と言って良いほど感度が低い。日本の優れたテクノロジーにナトリュウム硫黄電池がある。英語では、sodium-sulfur batteryである。NAS電池の登録商標で、日本碍子が2003年以来量産販売している。2016年末までの国内実績が350MWである。日本碍子ならではの秘伝の技術であるβアルミナ(セラミック)を電解質に、ソデューム(ナトリュウム)を負極に、硫黄を正極に用いる大容量2次電池である。ナトリュウムは、世界では死語である。化学記号はNaと書いてsodiumと読む。「NAS」では、欧米ではピンと来ない。

  

 IEEEのスマートグリッドの規格は、非常に良く考えられた規格であるが、これからの電力需給とテクノロジーの進化を取込んで行く電力インフラとしての配送電システムとなりうるかというと、そうはいい切れない。  インターコネクションノードに、エネルギーの貯留を基本機能として具備した新世代のスマートグリッド配送電ネットワークが必要であると思う。新しい集積化されたシステムコンセプトがあって然るべきだ。秘伝の技術を新しいコンセプトで体系化することがテクノロジー開発である。テクノロジーとビジネスが同じ目的律で連携し、テクノロジーモデルとビジネスモデルを同時に革新しなければならない。

 幹線に超伝導ケーブルで大地域毎のループをつくり日本全国を10位のループでカバーし、隣接するループをインターコネクションノードで結合する。さらに、一つのループ内に、複数の小地域ループを置き、大地域ループとのノードに、エネルギーの貯留を基本機能として備えた発電・変電所を配置するようなシステムを構成したらどうか。(仮にスマートノードと呼んで置こう)。

 小地域ループは、いわゆるスマートシティや工業団地単位で構成し、そのためのスマートノードを複数もち、その先はスマートグリッドで各需要家/売電家に接続される。

 このような配送電インフラを構築するには、習近平構想ならずとも、20年間に総額で¥200兆を上回る投資が必要になろう。¥200兆のビジネスが創出されることになる。世界規模で考えれば、¥数千兆のビジネス機会があると考えるべきであろう。COP21が掲げた産業革命以前の2倍以下にまでCO2濃度のレベルを下げる努力は、測り知れないビジネス機会を産み出すものだ。COPからの離脱によってアメリカの凋落は決定的になる。産業革命以前の2倍以下にまでCO2濃度のレベルを下げるという目的律をどうとらえるかに懸かっている。

  

 暮れのNHKを観ていたら面白いものを見つけた。東京電力、日本碍子、東芝、三菱電機、その他何社かの共同開発で、丁度私が「スマートノード」と仮に呼んだものにぴったりのテクノロジーが紹介されていた。

 何基かの風力発電の出力をソデューム硫黄電池に蓄電する。その電力を用いて、水を電気分解して水素を製造して貯蔵する。水素ガスによるガスタービンで発電機を駆動する。水素燃焼の高熱を利用して水蒸気を発生し、コジェネレーションとして発電機を駆動する。その出力を配電する。

 この方式の利点の第一は、風力や太陽光のように気象条件、日照条件など変動のある再補充可能エネルギー源のどれでも対応して、平滑化して充電できることにある。ソデューム硫黄電池は、満充電してから放電させるのが望ましいことや、充放電に300℃の高温が必要なこと等、制約があるが、操業ノウハウはほぼ完成の域にある。運搬用のコンテナで1台が構成されるなど、標準化も進んでいる。

1次入力の変動に、さらに柔軟に対応するだけでなく、液体水素の形で貯留することにより、需要に対する応答の巾を持たせ、水素/廃熱コジェネレーションにより、再補充可能エネルギー源からの1次入力を増幅して、出力電力を発生させることを目論むことができる。前述の小地域ループ用のスマートノード用として、10MW級、30MW級、100MW級のような形で標準化できるものと思われる。

                                            つづく

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             8.4.イノベーションの中心課題(4) (2018年第39回)   

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 イノベーションの中心課題は、地球環境の改善のためという目的律にある。テクノロジーも、ビジネスも、法律も、政治も、あげてこの目的律に取組むのが、人類の幸福と発展を志向する第4文明の課題であろう。

 COP21においてパリ協定を締約し、人為的温室効果ガスを削減し、産業革命以前(年代で区切る場合は1750年時点を基準にする)のCO2の2.0倍以下、できる限り1.5倍に近づけ、できるだけ早く温室効果ガスのピークアウトを目指し、その後、迅速に排出を削減し、今世紀後半に温室効果ガスの排出と吸収のバランスを図るとの長期目標が設定された。そのため、人為的温室効果ガスの排出削減に、優先して取組む必要がある。しかし、日本の現状は熱意のあるものではない。いまでも、わが国のエネルギー需要を満たすために、枯渇性エネルギー資源に大きく依存している。

 ある時期に、原子力への依存に大きく舵を切り、莫大な投資を行って来た。舵を切るときに、運転コストの経済性を強調するために、耐用年数が過ぎた廃炉のコスト、福島原発のようなメルトダウンを興した炉の廃炉費用、事故を起こしたときの保証費用などの見積、運転にともなって生成される最終廃棄物の処理費用の見積などは、全て先送りされてきた。これ等は、本来、原発の運転に伴う営業利益から、準備金として積み立てられて然るべきものであろう。それをやらない戦略的・意図的怠慢のなかで、2011年の3.11の大地震と津波が押し寄せた。福島第一も、新潟の柏崎刈羽も、原発プラントというシステムの運転、監視、制御のための電源供給が地震/津波によって破壊されたことが、原発プラント大災害に及んだ。システムというものは鎖に喩えられるが、頑丈な環をいくら繋いでも、たった一つ弱い環が混じっていれば、全体の強度は、その弱い強度の環によって決まるというのが真理である。とても「想定外」などという素人の言い訳は、今からでも良いからはっきりと否定し、設計上の誤り/欠陥であり、欠陥を見過ごして承認/決定を行った誤りを認めるべきである。

  

 自民党/自民・公明政権は、原子力規制委員会が安全と認めたものは安全であるという安全神話をつくりあげ、万が一の事故への備えを疎かにして、エネルギー基本計画を閣儀で決めるスキームにしてしまった。さらに問題なのは、ウランを核燃料として核分裂をさせると、プルトニュウムというやっかいな放射性廃棄物を生成させてしまうことにある。核不拡散条約の定めにより、IEAの厳重な管理下に置かれ、国外への流出と日本の原爆製造への転用がないことを保証する管理体制が充分にあるという認証が得られていないことにある。

  

 2014年4月閣議決定のエネルギー基本計画(第四次計画)は、原子力発電を石炭火力発電などと並び、一定量の電力を安定的に供給できる「ベースロード電源」と位置づけ、原発再稼動へ道を開いた。同時に、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーについては、過去の計画を上回る水準で利用・普及を目ざすことも盛り込んだ。使用済み核燃料(プルトニュウム)の再利用を目ざす「もんじゅ」開発は堅持するものとした。高速増殖炉「もんじゅ」はトラブルが相次いでおり、放射性廃棄物を減らして核不拡散関連技術の向上を目ざす研究拠点と位置付け、役割を修正したが、テクノロジーとしては殆ど見こみが立たない。

 将来のあるべき姿としての電源の組み合わせとして経済産業省が数年おきにつくる「長期エネルギー需給見通し」で定めている。最新の2015年7月のものは原発の再稼働方針を示した前年のエネルギー基本計画をふまえ、2030年度に原発20-30%、石炭火力26%、再生可能エネルギー22?23%になるとした。電力需要は原発事故後、減り続けているが、需給見通しでは2030年度の需要は2013年度よりも増えると見込んでいる。

 再生可能エネルギーのうち、太陽光発電も風力発電も、いまや最大の需要国であり、装置製造国に伸し上がっているのは中国である。米国とドイツは政策主導でベースロード電源の原発依存を避けた。そして太陽光発電と風力発電の需要国と装置供給国の2-3位に並んでいる。日本における固定価格買取制度の対象である家庭用太陽光発電の認定容量は2016年度末には出力946万キロワットに達し、産業用は2901万キロワットであった。制度全体では4422万キロワットであり太陽光が8割以上を占める。水力を除いた再生可能エネルギー全体で2016年度には日本の全発電電力量のわずか約7.7%が賄われているに過ぎない。

  

 遡って2009年2月に、環境省によって再生可能エネルギーの普及促進による便益の試算結果が発表された。2030年までに累計25兆円の投資が必要だが、累計の経済効果は2020年までに29〜30兆円以上、2030年までに58兆〜64兆円以上になり、また2020年には60万人の雇用を生み出すと推計されていた。普及政策としては固定価格買い取り制度の採用も提案していた。しかし、実状はもっと急ピッチで進んでいる。

 COP23は、暮の解散政局に振り回され、今年のダボス会議と合わせて目立って動き出した再生可能エネルギー関連産業への投資家達の熱い動きを日本のメディアは真面目に報じなかった。

欧州、中国の自動車産業が、急速にEV化へ動き出した。太陽光発電と風力発電の装置・システムベンダーに投資ファンドが群がっていたという。太陽光発電や風力発電の製造コストは、枯渇性エネルギー源による発電コストより高価であることは知られている。風況、気象条件、昼夜によって不随意である。それ等によって生ずるコスト差を克服しなければならない。

  

 炭素税や課徴金のように、好ましくないものに税や課徴金を課し、好ましいものには税を減じたり、交付金を与えたりする。好ましいものの開発に補助金を交付するなどして、コスト差を解消して行く。かつて、1974年、当時のオイルショックにより石油に代わる代替エネルギーを模索し、原子力発電所、水力発電所、地熱発電所等の設置を促進するためであった発電施設の設置促進、運転の円滑化、利用促進、安全確保、電気の供給の円滑化などを目的に、一般電気事業者の販売電気に課している(したがって、電力消費者負担)国税、目的税として創設された。2007年度から石油特別会計と電源特別会計を統合することが定められ、エネルギー対策特別会計となった。石油特別会計はエネルギー需給勘定と呼ばれ、石油、天然ガス、石炭を確保する予算であり、石油特別会計は電源開発促進勘定と呼ばれ、もっぱら原発推進の予算である。詳細はまさに泥沼のごとくCOPとは逆の路線を推進しているようにしか見えない。

  

 この法律の基本理念を大きく転換し、脱枯渇性エネルギー、再生可能エネルギーへの全面依存の目的律に向うべきであろう。

                                            つづく

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