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≪ビジネス/ものづくりお役立ち市場 マガジン  vol. 009 ≫


9 先行リサーチシナリオ目的律と因果律 イノベーションには覚悟が必要

     9.1.イノベーションには覚悟が必要 (2018年第40回)

キャリア・コンサルタント協同組合 風 巻  融

 

憲民主党が3月9日(2018年)「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案(原発ゼロ基本法案)」を共産、自由、社民と共同で衆議院に提出した。折しも国会は、森友文書問題で紛糾し、TV各局・各紙とも米朝会談問題と合わせて、また3.11.東北大震災7周年ということもあって、報じかたは、多少とまどいぎみにみえる。

同法案には、・成立後5年以内に全原発を廃炉にする・電力供給量に占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに4割以上にする等を目標にするという。

  

今年は、エネルギー基本計画の需給見透しの改訂の年にあたり、1月頃からいろんな発言が目についた。立憲民主党の菅直人元首相は、2月6日の予算委員会で、原発の発電コストに事故炉の廃炉費用がカウントされていないのはおかしいこと、再生可能エネルギーの売電事業者に、送電線増強の費用負担を強いているのが、普及の壁になっていることを巡って論戦を展開した。自由民主党内からも、再生可能エネルギーの大幅拡大に修正すべきだとする意見が出された(2月13日予算委員会)ほか、小泉元首相は、各地で講演会を開き「自由民主党も、近い将来変わり原発ゼロは必ず実現する」と唱えている。政治の世界で論戦が白熱化し、5年以内に全原発の廃炉の展望が拓け、エネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに4割以上にするような目標設定ができれば、こんなに結構な話は無い。しかし、政治の決断だけで、「原発ゼロ法案」が成立するほど簡単なことではない。テクノロジーとビジネスと法律と政治が、心を一つにして連携しなければとても実現しないであろう難題、巨大なイノベーションの集合なのである。

エネルギー供給は、現行の電気事業法を基軸に、エネルギー政策基本法、これら諸法に基づく国会決議、閣議決定、審議会決定、施行規則などの膨大な積み重ねの上に、原子力をベース電源とするという基本政策として何十年にもわたって構築されてきた。電気事業法にいたっては、独占禁止法の特例として地域独占を許されたビジネスによって行われて来た。並みの岩盤規制どころでない強固な地盤が、並みの規模ではない公費の投入によって固定資本形成が行われて来た。本来なら準備金が積み立てられていなければならない使用済み核燃料の最終処分費用と廃炉費用は用意されていない。かつまた、そのためのテクノロジーは確立されておらず、IEAの規制と承認のもとで行われなければならず、その見透しはまったくない。

  

「原発は経済的合理性よりリスクの方が大きい。」と立憲民主党代表の枝野幸男は言っているようだが、そのリスク認識が、どのようなものであるかを良く窺いたい。私もこの発言には賛成であるが、たとえば核不拡散条約のもとで、使用済み核燃料(プルトニュウム)の再終処分のIEAの承認が得られないリスクをどうやって克服するのだろうか。相当のテクノロジーについての深い造詣とビジネス戦略と政治的ガバナンスをもって、テクノロジーとビジネスと法律と政治のイノベーションに取組まなければならない。

まずは、相当の覚悟が必要だ。その第一は5年以内に全原発の廃炉の展望が拓き、エネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに4割以上にする技術とビジネスの戦略の立案にあると思う。そう思っていろいろ調べ始めたら、うえに挙げたリスクについて不明なことが山のように出て来た。それを整理する時間をいただきたいので今月はここまでとしたい。

                                            つづく

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             9.2.今年はエネルギー基本計画の年(2018年第41回)   

キャリア・コンサルタント協同組合 風 巻  融

 今年2018年はエネルギー基本計画が策定される年に当る。前例に倣えば、7月後半には閣議決定の運びとなる筈である。このエネルギー基本計画は、総合エネルギー調査会の議を経て、2030年計画と2050年脱炭素化シナリオを纏めなければならない点で大きな重荷を背負っている。2050年シナリオは、パリ協定に基づき、CO2排出量を、1990年比で2050年までに80%削減するシナリオを策定することであり、2030年計画では在来のベースロード(基本負荷)電源であった火力と原子力とをどのように戦略的な位置づけをするかにある。 2050年シナリオは勿論一筋縄ではないことであるが、2030年計画においても、もはや「原発は安い」という神話は崩壊しているからである。廃炉や使用済み核燃料処理のテクノロジーは未経験で、膨大なコストがかかることが明らかになって来ている。加えて1F事故(欧米の専門家達がフクシマと言いにくいので、1Fと呼んだのが始まりらしいが、いまでは日本の専門家まで1Fと呼ぶらしい)以来、厳しくなった耐震基準に合わせた安全対策のための改修費をかけると、原発は採算のとれないものになってしまうという2000年頃には、原発の安全性を高めると割に合わないことが判っていたらしいのだが、そういう中で、2016年には電力小売りの全面自由化が行われた。これによって総括原価方式は消滅させられる。電力自由化は、1992年米国で卸電力市場が自由化され、EU、日本に波及し、1995年電力卸売り自由化、2000年小売り電力の部分自由化が行われ、2016年の全面自由化になったものである。EUで1996年に全EU加盟国に「電力自由化指令」が出されたのも大きかった。殆どのエネルギー資源を国外に求めている日本のエネルギーコスト、電力料金はもともと高く、国際競争力の足枷になっており、自由化すれば安くなるだろうという波が押し寄せた。これは、「まだコップの水は半分ある」と捉えるか、「コップの水は半分しか無い」と捉えるかという認識の問題で、その認識をイノベーション条件としてどう活かす戦略に繋ぐかが重要になる。  

  

さらに立憲民主党が3月9日(2018年)「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案(原発ゼロ基本法案)」を共産、自由、社民と共同で衆議院に提出した。折しも国会は、森友/加計文書問題で紛糾し、TV各局・各紙とも米朝会談問題と合わせて、また3.11.東北大震災7周年ということもあって、報じかたは、多少とまどいぎみにみえる。同法案には、・成立後5年以内に全原発を廃炉にする・電力供給量に占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに4割以上にする等を目標にするという。

  

 もともとエネルギー基本計画には「我が国が目指すべきエネルギー政策は、徹底した省エネルギー社会の実現、再生可能エネルギーの導入加速化、石炭火力や天然ガス火力の発電効率の向上、蓄電池・燃料電池技術等による分散型エネルギーシステムの普及拡大、メタンハイドレート等非在来型資源の開発、放射性廃棄物の減容化・有害度低減など、あらゆる課題に向けて具体的な開発成果を導き出せるような政策でなければならない。そして同時に、地球温暖化問題解決への貢献といった国際的責務も正面から受け止めつつ、国民一人一人の意見や不安に謙虚に向き合い、国民の負託に応え得るエネルギー政策である。」と述べられている。

 しかし、多くの先進諸国は、再エネを主軸としつつも、原子力や火力の低炭素化、省エネ等、複数選択肢を組み合わせたシナリオを採用している。米国[99基]、フランス[58基]、中国[37基]、ロシア[35基]、インド[22基]、カナダ[19基]、ウクライナ[15基]、英国[15]、スウェーデン[8基]など、以下チェコ、パキスタン、フィンランド、ハンガリー、アルゼンチン、南アフリカ、ブラジル、ブルガリア、メキシコ、オランダ、日本の20ヶ国で合計1826基の原発が、現在・将来とも利用される。

  

 パリ協定への国際的対応に歩調をあわせて、1990年比で80%のCO2削減に向うには、「未来の考え方を変えよう」とする動きがあるようだ。次回以降それにふれたい。

 

                                            つづく

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             9.3.脱炭素化エネルギー基本計画(2018年第42回)   

キャリア・コンサルタント協同組合 風 巻  融

 

COP21パリ協定の目標に、真面目に挑戦するには、2050年までに、CO2排出量を1990年比で80%削減しなければならないといわれている。そのために、産業革命以前のCO2(年代で区切る場合は1750年時点を基準とし、CO2濃度は275ppmであったとしている)(現在は400ppm)の2.0倍以下、できる限り1.5倍に近づけ、できるだけ早く温室効果ガスのピークアウトを目指し、その後、迅速に排出を削減し、今世紀後半に温室効果ガスの排出と吸収のバランスを図るとの長期目標が設定された。そうしないと、温暖化による気候変動を防ぎ、人類が平穏に生存することが不可能になるという危機認識を共有した。IPCC第4次評価報告書によって、エネルギーの1次源(source)を再補充可能な自然エネルギー(Renewable Energy)と枯渇性エネルギー(化石燃料といわなくなった)の二大区分が用いられようになった。そのうえのIPCCのはたらきかけを各国の政策担当者(政府)も理解するようになり、ようやく、2016年12月のCOP21においてパリ協定が合意された。ここまでは、レビューである。

 パリ協定を敷衍した重要課題が浮上しているが、わが国の取組みは覇気を欠いた情けないものに留まっている。

  1. 今年はエネルギー基本計画策定の年であるが、こんなもので良いのだろうか

  2. 新しい統合理念と2050年までの戦略を示さなければならないのに、十分にしめされていない。

  3. 「未来をどう捉えるか」について革新の意図が現れているが、何を、どうやるかについての構想がお座なりである。

  4. 地球についての知識が不十分なことが判っているのに、何も触れていない

などである。

 

世界的に知られているRenewable Energyとは「自然界によって利用する以上の速度で補充されるエネルギー全般」と定義されて、その内訳も太陽熱、地熱、太陽光、風力、海洋利用など細かく明示された。日本では、Renewable Energyを、なぜか、「再生可能エネルギー」と訳すことを許している。「再エネ」と略されて、再エネ、再エネと繰り返しているうちに、その奇妙さ、欺瞞性が薄らいで「再生可能エネルギー」でも良いではないかとさえ思えてくる。ことの発端はバイオマスがRenewable Energyの一つに加えられたことにあると思える。

 ご承知のように、バイオマスを燃焼させればCO2を排出する(カーボンポジティブである)が、その成長過程における光合成によりCO2を吸収し酸素を生成してカーボンネガティブになり、時間の差はあるが、グローバルにはカーボンニュートラルと評価してよろしいということでRenewable Energyにカウントされた。

 しかし現実には、バイオマスは間伐材を活用するアイデアも、成長が早く高燃焼力のある植物を栽培するにも、地域経済の制約や地政学的矛盾などにより中々巧くは行かない。これを観て、「一時期カーボンポジティブであっても、全体としてカーボンニュートラルを装うことが出来れば大成功ではないか」とする悪知恵が横行しているのが、現在までのエネルギー基本計画で、石油特会やエネルギー特会によって原発と火力(石炭、天然ガス)への依存を基軸とすることにしてきた。

 新しいエネルギー基本計画は、2030年までと、2050年までの二段階構想になっている。当然二重であるべきだと思うが、二段階に見える。2030年までは、在来のミックスの延長のまま直線的アプローチで行き、政府案は、2030年のエネルギーミックスは、原子力22%、石炭26%、LNG27%、再エネ22~24%に纏めようとしている。一見、再エネ22%以上は意欲的に見えなくもないが、枯渇性エネルギーが全体の75%を占め、パリ協定以後の二年間何をやっていたのであろう。その一方で、IEA によれば、2040 年段階で、パリ協定の2.0℃シナリオというCO2 削減に向けた極めて野心的なシナリオであっても、一次エネルギー供給に占める化石燃料の比率は、先進国で53%、新興国にあっては63%という比率を留まる。再生可能エネルギーは、先進国でも32%、新興国で29%を占めるに過ぎず、世界のエネルギー情勢は石油による地政学的リスクに大きく左右される構造が依然続く。

 一体、いつになったらCO2排出のピークアウトになるのか全く計画されていない。発電以外にも熱エネルギーが必要で、鉄鋼生産や航空、海上運輸産業のように、CO2を排出せざるを得ないテクノロジーをベースにしている人間活動の必要を許容するなら、発電によるCO2排出はゼロ、枯渇性エネルギー源依存はゼロにしなければならない。

 その危機感はゼロではないようには見受けられるが、原発廃止、枯渇性エネルギー火力の廃止によるコスト高の圧力を克服する見通しが全くたたないように見受けられる。

  

 米国は早くにエネルギー省を設置し、ウランと石油の確保を中心にしたエネルギー政策を推進してきた。ひとつは、原爆用ウランと原発用ウランの厳重な統制下における生産と、ふたつは、冷戦下においてガソリンの市価を低く維持するための石油の確保(備蓄)が目的であった。

 シェールガスの成功により、世界の枯渇性エネルギー市場における米国のポジションは大きく変わり、石油の輸入を必要としない国になった。世界の地政学的経済リスクは大きく変わった。トランプ大統領は、これを梃子に、パリ協定からの離脱を宣言した。アメリカファーストを掲げる彼の三枚舌に振り回されてはならない。かつて京都議定書のときに認められた排出権取引で大儲けをしたのは、議定書から離脱した米国であった。

 エネルギー省の力は以前に増して強力になっている。そのエネルギー国家安全保障を司る省にARPA-Eと呼ばれるエージェンシーがある。エージェンシーとは、企画立案部門でなく実行部門である。かつて国防総省にあったDARPA(Defense Advanced Research Project Agency)によってインターネットが開発された。2009年に設置されたARPA-Eとは、すなわちAdvanced Research Project Agency-Energyで、エネルギーに関する先進的な開発プロジェクトを、毎年40プロジェクトを推進している。このプロジェクトエージェンシーの素晴らしいところは、各プロジェクト毎にプロジェクトディレクターがいて、研究開発を推進実行し、つねに事業化による成功の可能性を厳しくチェックされることにある。失敗も許されるが、成功の蓋然性がないと判断されると、中止になる。しかし、必要と判断されると、仮令失敗した主題、完成度の不十分な主題であっても、繰り返し採用され挑戦されることがある。ARPA-Eでは、パリ協定の2050年2.0℃シナリオに即したCO2 削減に向けた野心的なプロジェクトはいくつも実施されている。

 日本では、ARPAは高等学術研究局と誤訳されてきた。Researchを学術研究ではなく、一方で基礎研究の領域まで手を広げることから、他方で新しい生産技術の開発を目論んだ量産試作工場を造ることも許される。プロジェクト主題を見ていると、あたかもベンチャ企業の出初め大会を見ているような観がある。いつその中から、ドミナントなデザインが生まれるか判らない。  パリ協定の2050年2.0℃シナリオを実現するために、何を・どうしたらよいか判っている国はどこにもない。しかし、脱炭素化にはシステム的に蓄電や水素化を取り入れた方策が必要だという認識で、方向性は誰にも見えている。在来の火力発電や原発のような大型・大規模な電力供給ではなく、小・中規模の供給拠点を分散し、スマートグリッドのようなネットワークによる送配電網が必要になり、地域間の供給調整のための超伝導電線を用いたネットワーク系統線が必要だというテクノロジーの方向性については、期待の集まる方向性ははっきりしている。しかし、これらのテクノロジーの方向性を活かすには、産業・インフラの大規模な、したがって大規模投資が必要になる。当然、大きなコストリスクに直面する。エネルギー政策の再構築が必要になり、脱炭素化の指導理念の国民的コンセンサスが必要になる。 

 私の知るアメリカはデファクトスタンダードの国である。トランプ大統領がパリ協定離脱というゴリラ踊りの大見得に世界が惑わされて、アメリカファースト腹をたてている間に、ARPA-Eからいくつかのコンソーシアムが生れ、気がついたら脱炭素化のデファクトスタンダードが産み出されている可能性が大きい。遅蒔きではあるが、経済産業省の電気事業、エネルギー所管部門と、資源エネルギー庁を合体させ、エネルギー省に昇格させるべきであろう。NEDOと産業技術研究開発機構と科学技術振興機構の電気とエネルギーに関連する部門をNEDOに統合すると同時に、ARPA-Eのような体制を導入することが鍵でもある。昨今いわれているのは、複線的アプローチによる多様性が必要であるという。このアプローチを成功させ、産業・インフラの再編にまで持って行くには、日本型ARPA-Eでは、最終的に国設・民営化による脱炭素化設備/システムの供給事業体の創設をめざすべきではないか。往年の官営八幡製鉄所は、後に民営化され大いに発展した。

 ついでにさらなる私見をいえば、議員内閣制というが、閣僚は(衆議院議長と同様)閣僚になるとき政党籍をはなれて特別国家公務員という公僕の地位につくのが良いと思う。

当然、政治家でない民間からの登用は、もっと活発に行われるべきで、とくに、経済産業大臣、エネルギー大臣、国土交通大臣、厚生大臣、総務大臣などは、テクノロジーの分野で業績の認められる人で、できればMSまたはPhDとMBAの学位を併せ持つことを資格要件とするべきで、とくにエネルギー大臣は火急を要する。(メルケル首相が物理学のPhD学位の保持者であることを思い返して欲しい)

  

 新しいエネルギー基本計画の検討資料を見ると、3E+Sということや、PDCAサイクルにかわってOODAサイクル、多様な選択肢による複線的シナリオ、脱炭素化を目指すなどの表現が見える。これらについては次回にふれたい。

                                            つづく

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